小池英樹のAIマーケティング経営ノート

ChatGPT dots が私の秘書になった日|AIにも報連相が要りました

AI の「完了しました」を、そのまま信じない

「AIマーケティング経営ノート #04」「ChatGPT dots」「AIにも、報連相。」「6つの仕事をまとめて点検」の文字と、電話を耳に当てる小池英樹、ヘッドセットをつけた秘書のイラスト。
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AIにも、報連相が要りました。

AI が「完了しました」と報告してきたとき、その仕事は、本当に終わっているでしょうか。

私は、ある日の仕事を、Codex の六つのスレッドに分けて進めました。けれども、六つの返事を集めるだけでは、全体の確認は終わりませんでした。

そこで、ChatGPT の AI 秘書「dots」に、六つの仕事をまとめて点検させました。抜けを見つけ、報告書にするところまでです。この記事では、AI の仕事にまとめ役を置いた一日のことをお伝えします。

「六つの窓の返事を、一つの報告に」。Codex の窓が六つ並び、矢印の先に「一つの報告書」。

なお、六つの仕事は、どれも私が一つずつ指示を出して進めたものです。AI が勝手に仕事を始めたわけではありません。

一つの窓に、一つの仕事を渡す

Codex は、OpenAI の AI エージェントです。名前から、プログラマーのための道具だと思われがちですが、指示を出せば、調べものや資料づくり、画面の操作まで進めてくれます。

ここでいうスレッドとは、一つの仕事のための、一つの会話の窓のことです。一つの窓に一つの仕事を渡すと、その窓の中に、私の指示と、AI が途中で何をしたかの記録と、最後の報告が残ります。

ある日の実務で、広告の運用について、やることが六つ重なりました。成果の出ていない広告を止める。出し先を整理する。新しい広告を作る。検索広告の文を作り直す。そうした、性質の違う六つの仕事です。

順番に片づけていけば、何日もかかります。そこで、六つの窓に一つずつ仕事を渡し、同時に進めました。それぞれの窓は、よく働いてくれました。

問題は、そこからでした。

AI を増やすほど、確かめる仕事が増える

夕方の時点で、仕事が終わった窓もあれば、まだ動いている窓もありました。終わった窓の報告も、書き方や細かさがばらばらです。どれが済んで、どれが予約しただけで、どれがまだなのか。報告を読むだけでは、すぐには分かりませんでした。

「夕方、六つの報告」。六つの報告に「済んだ?」「予約だけ?」「まだ?」「動いている」が混ざり、「残ったこと:確かめる仕事は、私のところに」。

お客様に報告するには、六つの窓を、指示から途中の記録まで読み直し、一つにまとめ直す必要があります。自分でやれば、一日は優にかかります。

ここで、人の組織と同じことが起きていると気づきました。部下が一人なら、本人の報告を聞けば足ります。けれども、任せる相手が増えると、一人ひとりは仕事をしているのに、全体がどうなっているかをまとめて確かめる人が必要になります。報告・連絡・相談、いわゆる報連相の受け手です。

「報連相の受け手」。報告・連絡・相談の三つと、「仕事をする相手が増えるほど、受け止めて確かめる人が要る」。

AI も同じでした。仕事をする AI を増やすほど、その報告を受け止めて、確かめる仕事が増えます。そして、その仕事は、全部、私のところに戻ってきていました。AI に任せて仕事は速くなりましたが、確認の仕事は、私に残ったままだったのです。

そこで、確認のための席を、一つ置くことにしました。それが、AI の秘書です。

「確認のための席を、一つ置く」。下から、仕事をする Codex の六つの窓、全体を読み点検し報告する秘書(dot)、決める私の三段。

仕事をする AI と、確かめる AI を分ける

ChatGPT の dots では、続きのある仕事を任せられる AI エージェントを持てます。その一つが dot で、私は秘書として使っています。

dot は、専用のクラウドの PC とブラウザを使い、頼んだ仕事を、会話のあとも進められます。つないだアプリの情報を使うこともでき、仕事の途中で、電話で優先順位を伝えることもできます。確かめてもらうのは、私が接続を許可した PC と資料の範囲です。動画を収録した時点では、使える人は限られていました。

勝手に動かないように、ルールも決めておきます。任せてよいこと。先に聞くこと。人に渡すこと。

「勝手に動かないための、三つのルール」。1 任せてよいこと、2 先に聞くこと、3 人に渡すこと。

私が dot に任せたのは、六つの窓の仕事そのものではありません。六つの窓の上に立って、全体を読み、点検し、私に報告することです。仕事をする AI と、確かめる AI を、分けました。

「完了しました」は、AI が自分で書いた要約

dot に頼んだことは、四つです。

  1. 六つの窓を、最後の報告だけでなく、私の指示、途中の記録、実行した結果まで、横断して読むこと
  2. 済んだこと、予約しただけのこと、まだのことを、分けること
  3. それを、報告書にまとめること
  4. 設定は、一切変えないこと
「dot に頼んだ四つのこと」。1 横断して読む(指示・途中の記録・実行した結果まで)、2 分ける(済んだ・予約だけ・まだ)、3 報告書まで作る、4 設定は一切変えない。

いちばん大事にしたのは、一つ目です。

AI の最後の報告は、AI が自分で書いた要約です。「完了しました」と書いてあっても、それは、AI がそう判断したということです。

本当に終わったかどうかは、三つを突き合わせないと分かりません。何を頼まれたのか。これが指示です。実際に何をしたのか。これが途中の記録です。その結果、どうなったのか。これが実行した結果です。

「「完了しました」を、三つで突き合わせる」。1 指示(何を頼まれたのか)、2 途中の記録(実際に何をしたのか)、3 実行した結果(その結果、どうなったのか)。

人の仕事でも同じです。部下から「終わりました」と聞いたら、頼んだことと、出来上がったものを見比べます。AI にも、同じ確かめ方をさせました。

二つ目の分け方にも、理由があります。広告の仕事では、変更を予約しただけで、まだ反映されていないものがあります。これを「済んだ」に入れてしまうと、報告を受けた人は、もう終わったと思ってしまいます。だから、「済んだ」「予約だけ」「まだ」の三つに分けさせました。

「三つに分けさせた」。済んだ・予約だけ・まだ。理由は「予約しただけのものを、「済んだ」に入れない」。

四つ目は、秘書の役割をはっきりさせるためです。今回、秘書に任せたのは、確かめることと、報告することまでです。点検の途中で何かを見つけても、自分では直さずに、私に戻してもらいます。

電話で伝えたのは、手順ではなく判断の基準

dot に点検を頼んだあと、車で移動する用事がありました。そこで、移動中の車から、ハンズフリーで dot に電話をかけました。画面は見ずに、声だけで話しました。

話し方は、正直、まとまっていませんでした。それでも、伝えたことは一つです。成果の出ている広告が、出る機会を逃していないか。その点を優先して確かめ、報告にまとめてほしい、と伝えました。電話は、4分ほどでした。

dot は、私の意図を言い直し、点検と報告に反映する方針を返してきました。

ここで、気づいたことがあります。秘書に電話で伝えたのは、作業の手順ではありませんでした。判断の基準です。

優先する方針は、最初の依頼にも書いていました。電話では、その中でも何を大事にしてほしいかを、改めて伝えました。成果の出ている広告が、出る機会を逃さないことです。

「電話で伝えたのは、判断の基準」。「作業の手順」ではなく「何を優先して確かめるか」。報連相の「連絡」。

人の秘書にも、移動中に「あの件は、こちらを優先してください」と電話することがあります。報連相の「連絡」です。相手が AI でも、同じでした。

抜けを見つけるのは AI、どうするかを決めるのは人

約二時間後、dot から報告書が届きました。本文の報告書のほかに、詳しい別紙、止めた広告を並べた資料、そして報告のメールの下書きまで、そろっていました。

dot が仕上げた4つの資料(報告書・別紙・止めた広告の資料・メールの下書き)が並んだ画面。内容はぼかしていて読めない。

その中に、私が気づいていなかったことが、一つありました。六つの仕事のうち一つで、一部の作業が「保留」のまま残っていたのです。dot は、その箇所を報告書に挙げていました。自分がまだ判断しなければならない仕事が残っていたことに、私はここで気づきました。

これが、最後の報告だけでなく、途中の記録と実行した結果まで読ませた理由です。AI の「完了しました」の中にも、終わっていない所が残っていることがあります。

もう一つ、dot が止まった所もあります。dot は、設定を一つも変えていません。報告のメールも、下書きまでで止めて、外には送っていません。決めておいたルールのとおり、変えることと、外に送ることは、私に戻してきました。

「dot が止まった所」。「設定を変える」「外に送る」は、人に戻す。メールは、下書きまで。

抜けを見つけたのは、AI です。でも、その抜けをどうするかを決めるのは、AI ではありません。

報連相を受けて、最後に判断するのは人

報告書を受け取って、私がしたことは、三つです。

一つ目は、dot が見つけた抜けを、元の窓の記録で、自分の目で確かめたことです。秘書の報告も、そのまま信じるわけではありません。ただ、指摘された所から確認を始められるようになりました。そのうえで、重要な変更や、外に出す報告は、私自身でも確かめました。

二つ目は、保留のまま残っていた作業を、どうするかを決めたことです。進めるのか、止めておくのか。これは、事業の判断です。

三つ目は、報告の中身を決めたことです。2回目の電話で、相手に渡す資料とメールは、相手が判断するために必要な内容に絞ってほしいと頼みました。こちらで確認を続ける項目は、社内用に分けました。dot は、そのとおりに直してきました。報告のメールを送るかどうかも、私が読んでから決めました。

「報告書を受け取って、私がした三つ」。1 抜けを、自分の目で確かめた、2 保留の作業を、どうするか決めた(これは事業の判断)、3 報告の中身を決めた(相手が判断するために必要な内容に絞る)。

六つの窓が仕事をし、dot がまとめて点検し、私が決める。報連相を受けて、最後に判断するのは、人です。

「仕事をし、点検し、決める」。Codex の六つの窓が仕事をする → dot がまとめて点検する → 私が決める、の三段。

誰が全体を確認するかを決める

AI にも、報連相が要りました。六つの仕事を任せたら、その報告をまとめて確かめる役も必要でした。

AI を増やすだけでは、仕事は軽くなりきりません。誰が全体を確認するのかを、先に決めておく。そして、AI の「完了しました」を、そのまま信じない。

皆さんが AI に任せている仕事でも、何を頼んだか、実際に何をしたか、どうなったか。この三つが残っているかを、まず見返してみてください。

「AI に任せた仕事で、まず見返す三つ」。1 何を頼んだか、2 実際に何をしたか、3 どうなったか。

AI を増やすだけでなく、誰が全体を確認するかを決める。

小池英樹 株式会社AutoPilotAcademy CEO