小池英樹のAIマーケティング経営ノート
ChatGPT dots が私の秘書になった日|AIにも報連相が要りました
AI の

AIにも、報連相が要りました。
AI が「完了しました」と報告してきたとき、その仕事は、本当に終わっているでしょうか。
私は、ある日の仕事を、Codex の六つのスレッドに分けて進めました。けれども、六つの返事を集めるだけでは、全体の確認は終わりませんでした。
そこで、ChatGPT の AI 秘書「dots」に、六つの仕事をまとめて点検させました。抜けを見つけ、報告書にするところまでです。この記事では、AI の仕事にまとめ役を置いた一日のことをお伝えします。

なお、六つの仕事は、どれも私が一つずつ指示を出して進めたものです。AI が勝手に仕事を始めたわけではありません。
一つの窓に、一つの仕事を渡す
Codex は、OpenAI の AI エージェントです。名前から、プログラマーのための道具だと思われがちですが、指示を出せば、調べものや資料づくり、画面の操作まで進めてくれます。
ここでいうスレッドとは、一つの仕事のための、一つの会話の窓のことです。一つの窓に一つの仕事を渡すと、その窓の中に、私の指示と、AI が途中で何をしたかの記録と、最後の報告が残ります。
ある日の実務で、広告の運用について、やることが六つ重なりました。成果の出ていない広告を止める。出し先を整理する。新しい広告を作る。検索広告の文を作り直す。そうした、性質の違う六つの仕事です。
順番に片づけていけば、何日もかかります。そこで、六つの窓に一つずつ仕事を渡し、同時に進めました。それぞれの窓は、よく働いてくれました。
問題は、そこからでした。
AI を増やすほど、確かめる仕事が増える
夕方の時点で、仕事が終わった窓もあれば、まだ動いている窓もありました。終わった窓の報告も、書き方や細かさがばらばらです。どれが済んで、どれが予約しただけで、どれがまだなのか。報告を読むだけでは、すぐには分かりませんでした。

お客様に報告するには、六つの窓を、指示から途中の記録まで読み直し、一つにまとめ直す必要があります。自分でやれば、一日は優にかかります。
ここで、人の組織と同じことが起きていると気づきました。部下が一人なら、本人の報告を聞けば足ります。けれども、任せる相手が増えると、一人ひとりは仕事をしているのに、全体がどうなっているかをまとめて確かめる人が必要になります。報告・連絡・相談、いわゆる報連相の受け手です。

AI も同じでした。仕事をする AI を増やすほど、その報告を受け止めて、確かめる仕事が増えます。そして、その仕事は、全部、私のところに戻ってきていました。AI に任せて仕事は速くなりましたが、確認の仕事は、私に残ったままだったのです。
そこで、確認のための席を、一つ置くことにしました。それが、AI の秘書です。

仕事をする AI と、確かめる AI を分ける
ChatGPT の dots では、続きのある仕事を任せられる AI エージェントを持てます。その一つが dot で、私は秘書として使っています。
dot は、専用のクラウドの PC とブラウザを使い、頼んだ仕事を、会話のあとも進められます。つないだアプリの情報を使うこともでき、仕事の途中で、電話で優先順位を伝えることもできます。確かめてもらうのは、私が接続を許可した PC と資料の範囲です。動画を収録した時点では、使える人は限られていました。
勝手に動かないように、ルールも決めておきます。任せてよいこと。先に聞くこと。人に渡すこと。

私が dot に任せたのは、六つの窓の仕事そのものではありません。六つの窓の上に立って、全体を読み、点検し、私に報告することです。仕事をする AI と、確かめる AI を、分けました。
「完了しました」は、AI が自分で書いた要約
dot に頼んだことは、四つです。
- 六つの窓を、最後の報告だけでなく、私の指示、途中の記録、実行した結果まで、横断して読むこと
- 済んだこと、予約しただけのこと、まだのことを、分けること
- それを、報告書にまとめること
- 設定は、一切変えないこと

いちばん大事にしたのは、一つ目です。
AI の最後の報告は、AI が自分で書いた要約です。「完了しました」と書いてあっても、それは、AI がそう判断したということです。
本当に終わったかどうかは、三つを突き合わせないと分かりません。何を頼まれたのか。これが指示です。実際に何をしたのか。これが途中の記録です。その結果、どうなったのか。これが実行した結果です。

人の仕事でも同じです。部下から「終わりました」と聞いたら、頼んだことと、出来上がったものを見比べます。AI にも、同じ確かめ方をさせました。
二つ目の分け方にも、理由があります。広告の仕事では、変更を予約しただけで、まだ反映されていないものがあります。これを「済んだ」に入れてしまうと、報告を受けた人は、もう終わったと思ってしまいます。だから、「済んだ」「予約だけ」「まだ」の三つに分けさせました。

四つ目は、秘書の役割をはっきりさせるためです。今回、秘書に任せたのは、確かめることと、報告することまでです。点検の途中で何かを見つけても、自分では直さずに、私に戻してもらいます。
電話で伝えたのは、手順ではなく判断の基準
dot に点検を頼んだあと、車で移動する用事がありました。そこで、移動中の車から、ハンズフリーで dot に電話をかけました。画面は見ずに、声だけで話しました。
話し方は、正直、まとまっていませんでした。それでも、伝えたことは一つです。成果の出ている広告が、出る機会を逃していないか。その点を優先して確かめ、報告にまとめてほしい、と伝えました。電話は、4分ほどでした。
dot は、私の意図を言い直し、点検と報告に反映する方針を返してきました。
ここで、気づいたことがあります。秘書に電話で伝えたのは、作業の手順ではありませんでした。判断の基準です。
優先する方針は、最初の依頼にも書いていました。電話では、その中でも何を大事にしてほしいかを、改めて伝えました。成果の出ている広告が、出る機会を逃さないことです。

人の秘書にも、移動中に「あの件は、こちらを優先してください」と電話することがあります。報連相の「連絡」です。相手が AI でも、同じでした。
抜けを見つけるのは AI、どうするかを決めるのは人
約二時間後、dot から報告書が届きました。本文の報告書のほかに、詳しい別紙、止めた広告を並べた資料、そして報告のメールの下書きまで、そろっていました。

その中に、私が気づいていなかったことが、一つありました。六つの仕事のうち一つで、一部の作業が「保留」のまま残っていたのです。dot は、その箇所を報告書に挙げていました。自分がまだ判断しなければならない仕事が残っていたことに、私はここで気づきました。
これが、最後の報告だけでなく、途中の記録と実行した結果まで読ませた理由です。AI の「完了しました」の中にも、終わっていない所が残っていることがあります。
もう一つ、dot が止まった所もあります。dot は、設定を一つも変えていません。報告のメールも、下書きまでで止めて、外には送っていません。決めておいたルールのとおり、変えることと、外に送ることは、私に戻してきました。

抜けを見つけたのは、AI です。でも、その抜けをどうするかを決めるのは、AI ではありません。
報連相を受けて、最後に判断するのは人
報告書を受け取って、私がしたことは、三つです。
一つ目は、dot が見つけた抜けを、元の窓の記録で、自分の目で確かめたことです。秘書の報告も、そのまま信じるわけではありません。ただ、指摘された所から確認を始められるようになりました。そのうえで、重要な変更や、外に出す報告は、私自身でも確かめました。
二つ目は、保留のまま残っていた作業を、どうするかを決めたことです。進めるのか、止めておくのか。これは、事業の判断です。
三つ目は、報告の中身を決めたことです。2回目の電話で、相手に渡す資料とメールは、相手が判断するために必要な内容に絞ってほしいと頼みました。こちらで確認を続ける項目は、社内用に分けました。dot は、そのとおりに直してきました。報告のメールを送るかどうかも、私が読んでから決めました。

六つの窓が仕事をし、dot がまとめて点検し、私が決める。報連相を受けて、最後に判断するのは、人です。

誰が全体を確認するかを決める
AI にも、報連相が要りました。六つの仕事を任せたら、その報告をまとめて確かめる役も必要でした。
AI を増やすだけでは、仕事は軽くなりきりません。誰が全体を確認するのかを、先に決めておく。そして、AI の「完了しました」を、そのまま信じない。
皆さんが AI に任せている仕事でも、何を頼んだか、実際に何をしたか、どうなったか。この三つが残っているかを、まず見返してみてください。

AI を増やすだけでなく、誰が全体を確認するかを決める。
小池英樹 株式会社AutoPilotAcademy CEO
