モノがあふれる市場で売り上げを伸ばすために。顧客生涯価値(LTV)を高める3つの方法

モノがあふれる市場で売り上げを伸ばすために。顧客生涯価値(LTV)を高める3つの方法

今回取り上げるテーマは、マーケティングにおける重要指標の1つである「顧客生涯価値」(Life Time Value=LTV)。LTVの基本的な概念や計算方法を整理したうえで、LTVを向上させるための3つの方法をご紹介していきます。

積み重なるマーケティング費用に頭を悩ませている方、商品の売り上げに課題を抱えている企業の担当者の方はぜひ参考にしてみてください。

顧客生涯価値(LTV)とは?

顧客生涯価値(LTV)とは文字どおり、1人の顧客が生涯を通じて企業に与える価値を示すマーケティング用語。商品の購入やサービスの利用が企業へどれくらいの収益をもたらすのか、具体的な金額であらわされます。

もちろん生涯といっても、1人の顧客が幼少期から老後にいたるまでずっと同じ商材を購入・利用し続けることはあり得ません。

あくまで企業と顧客が契約関係や取引関係にあった期間(商品の継続購入期間、会員登録してから退会するまで年数など)を対象とし、そこに購買単価と購買頻度を掛け合わせたのがLTV。計算式であらわすと以下のようになります。

顧客生涯価値(LTV)=平均購買単価×平均購入頻度×平均購買継続年数

たとえば1回あたりの平均購買単価が3,000円のネットショップにおいて、ユーザー1人の平均購入頻度が年6回、平均購買継続年数が5年なら、3,000円×年6回×5年=9万円がそのショップの利用者のLTVとなるわけです。

大手飲料メーカーのキリンではこのLTVを経営指標の1つとし、2013年から一般家庭向けのビールサーバーレンタルサービスをスタート。月額6,900円と決して安い料金ではないにもかかわらず、申込者が殺到し、一時はビールの生産が追いつかなくなるほどの人気を博しました。

また、近年のゲームアプリ市場で主流となっているビジネスモデル、アプリそのものは無料で配布し、ガチャをはじめとするユーザーの課金によって継続的な収益を得ていくというビジネスモデルも、LTVの考え方に乗っとったものと言えるでしょう。

LTVが重要視される理由

上記のキリンやアプリ運営会社のように、多くの企業がLTVを重要視するようになった背景にはいったい何があるのでしょうか?

最も大きな理由として考えられるのは、マーケットが飽和状態にあること。ややスケールの大きい話にはなりますが、アメリカ、中国、日本、EU諸国といったいわゆる先進国、少なくともそれらの国の大都市圏においては、生活に必要な物資・サービスが満ち足りています。

日用品・食品から耐久消費財、IT・通信サービスにいたるまで欲しいモノがすぐ手に入るようになり、多くの人のニーズ・購買意欲がほぼ満たされた結果、かつてのiPhoneのようなよほどの革新性がない限り、新商品1つで爆発的なヒットを生むのが難しくなりました。

また、日本では30年以上にわたって少子高齢化が続いており、今後も大きな消費拡大は見込めません。そうしたなかで限られたパイを奪いあうよりは顧客をつなぎとめること、新規顧客の獲得より既存顧客のロイヤリティ向上に重きを置く企業が増えてきているというわけです。

もう1つの理由は単純にコストの面。マーケティングの世界には、「1:5の法則」、「5:25の法則」と呼ばれる考え方があり、新規顧客の獲得には顧客維持の5倍のコストがかかる、既存顧客の離脱を5%減らせれば利益が25%改善すると言われています。

もちろん業種や業態によってこの法則が完全に当てはまるわけではないものの、より少ないコストで大きな利益をあげるのがビジネスの大命題である以上、多くの企業がLTVを重視するのは当然と言えるでしょう。

LTVを高める3つの方法

続いてはLTVを向上させるため方法について。

前述のとおり、LTVは平均購買単価、平均購入頻度、平均購買継続年数の掛け合わせなので、この3つすべて、あるいはいずれかを大きく改善できれば、LTVも向上します。それぞれどんな打ち手が考えられるのか見ていきましょう。

1.クロスセル(平均購買単価の改善)

平均購買単価を改善するにあたって最も簡単なのは値上げですが、商品への興味・関心が高い消費者ほど価格の変動には敏感なもの。数パーセント程度の値上げでも買い控えにつながる可能性があります。

また、ネット通販の場合、楽天、Yahoo!ショッピングといった大手ECモールのほとんどには価格順のソート機能があり、多くのユーザーに利用されています。値上げをすると掲載順位が下がって商品ページへのアクセス数が落ちてしまうといったデメリットもあり、やはり得策とは言えません。

そこで有効になるのがクロスセル。購入1回あたりの品数を増やすことで購買単価をアップさせる方法です。

たとえば、キッチン用品を販売する店舗なら、主力商品とあわせて掃除用具や洗濯用洗剤などをラインナップに加えておくのがおすすめ。鞄や靴といった革製品を取り扱うネットショップなら、防水スプレーや保革油、ブラシといったメンテナンス用品をセット販売するのもいいでしょう。

もともと購入しようとしていた商材とあわせて関連性の高いアイテムが提示されることで、消費者には「ついでにこれも」、「どのみち必要になるから、この際セットで‥」といった意識が生まれます。

デジタルマーケティングの成功事例として紹介されることの多い「北欧、暮らしの道具店」、「土屋鞄製造所」といったブランドは、こうしたクロスセルによって平均購買単価を大きく伸ばしてきました。

2.リターゲティング(平均購入頻度の改善)

平均購入頻度を改善するためには、ネット広告やメール配信システムのリターゲティング機能が効果的です。ここで言うリターゲティングとは、商品の購入履歴がある消費者に対して別の商品を提案する手法を指します。

具体例としては、ディスプレイ広告を使ったファッションコーディネート紹介、メルマガでの料理レシピ配信など。手持ちの商品と相性の良い商材、「これを加えれば、こんなこともできる」という事例を紹介することで、既存顧客を再び呼び込み、購入頻度を高められるというわけです。

また、業態によっては商材とあわせてセール情報などを継続的に発信していくのも購入頻度を高めるうえではいいかもしれません。

3.インセンティブ&サポート(平均購買継続期間の改善)

購買継続期間を伸ばすためには当然ながら、消費者に継続することの意味、顧客であり続けることのメリットを実感してもらう必要があります。

そこで効果を発揮するのが、実利性の高いインセンティブ。楽天、Amazonといった大手ECサイトが買い物ポイントの付与に通じて多くのユーザーを囲い込んでいるのはご存じのとおり。

前述のゲームアプリでも、人気タイトルの多くはユーザーの累計ログイン日数などにあわせてゲーム内で使えるポイントをプレゼントしています。

加えて、アフターフォローやカスタマーサポートも大事な要素の1つ。

顧客からの問い合わせに速やかに対応し、意見や要望を商品・サービスに反映させていくことで、顧客側には「きちんと話を聞いてくれる」、「大事にされている」という実感が生まれ、継続的な購買につながります。

最近ではLTVの向上を目的に、クラウド型のCRM(顧客管理システム)やチャットボットの導入を進める企業も少なくありません。

最後に

今回はマーケティング用語としてのLTVの概要や改善のための方法について解説しました。

LTVについて正しく理解し、改善に必要な施策を積み重ねることで顧客獲得のコストは抑えられ、事業の収益性アップにつながります。今回の内容をぜひお役立てください。

執筆者:AutoPilotAcademy編集部

執筆者:AutoPilotAcademy編集部

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監修者:小池英樹

監修者:小池英樹

AutoPilotAcademy[オートパイロットアカデミー] CEO 小池英樹 新潟市のマーケター(36歳)。新潟県新潟市生まれ、新潟市育ち、上智大学卒。 2011年にRutuboを設立、カネなし、コネなし、ノウハウなしの状況から独立。ヨドバシカメラで購入したホームページ作成ツール「Bind」を手元に事業開始。 顧客ゼロ・無収入の状態から販売促進を学び、中小企業300社以上のオンライン集客支援に携わる。顧客は日本全国及びに海外で活躍する日系企業に及ぶ。 顧客企業の集客支援も手掛ける傍ら、AutoPilotAcademyでは、培ってきた集客のノウハウを伝えている。 顧客獲得に苦心するスモールビジネスオーナーのためのオンライン集客のバイブルを作ることを目標としている。

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