マーケティングファネルとトリップワイヤー~情報があふれる時代に最速でモノを売る方法~

マーケティングファネルとトリップワイヤー

マーケティングへの理解を深め、実践していくためには体系的な知識を身につけておくことも大事。さまざまな施策を打っても思い通りの成果が得られない時、方向性に迷ってしまった時に、そうした基礎知識は現状を正しく認識し、軌道修正するきっかけになるからです。

そこで今回はマーケティング用語の1つであるマーケティングファネルとトリップワイヤーをテーマとしてピックアップ。それぞれどんな概念なのか、どんな効果を発揮するのか、実践するうえでどんな点に気をつけるべきなのか、詳しく解説していきたいと思います。

マーケティングファネルとは?

マーケティングファネルとは、消費者が購買にいたるまでの過程を示した図式のこと。

一般的に消費者が購買にいたるまでには、商品やサービスを認知し、興味関心を持ち、他の商材との比較・検討を経て購入するというプロセスがありますが、上記それぞれの段階で消費者の母数は減っていきます。

これは、商品の存在を知っていても興味を抱かない人はいるし、興味があっても買ってくれるのはそのうちの一部であるというごく単純な話です。

この収束、先細りの図式が理科の実験などで使う漏斗(英:Funnel)とよく似ているため、マーケティングファネルと呼ばれるようになりました。

身近な例を1つあげると、たとえばECサイトの売上アップを目的としたリスティング広告。

検索結果で広告文を目にする人を100とすると、興味を持ってECサイトのページへアクセスするのはそのうちの平均3%ほど。さらにページに記載された内容を確認し、他の商品と比較検討したうえで購入する人の割合はアクセス数の平均3%前後に過ぎません。この収束は購買に向けて母数が逆三角の形をとるファネルの図式に当てはまります。

ちなみにマーケティングにおけるファネルの概念は古くから知られており、1920年代にアメリカで提唱された「AIDOMA理論」、2004年に大手広告代理店の電通が提唱した「AISASモデル」もマーケティングファネルの1つです。

マーケティングファネルの有効性

次はマーケティングファネルの有効性、マーケティング施策にファネルの概念を取り入れることでどんなメリットがあるのか見ていきましょう。

たとえば前述のリスティング広告の場合、広告文に比較検討材料となる情報(価格、特典、競合商品との優位性など)を盛り込んでも、アクセス数アップはあまり望めません。検索結果画面の広告文を見たユーザーはあくまで認知の段階にいて、興味関心は薄く、比較検討するまでに至っていないからです。

一概には言えないものの、アクセス数を伸ばしたいのなら「〇〇な方必見…」、「〇〇も驚愕!…」といった興味関心を引き出すアイキャッチ的な文言の方が効果的でしょう。

一方でアクセス数は確保できているもののコンバージョンが伸び悩んでいる場合は、ページ内に比較検討に値する情報が少ない、あるいはショッピングカートに問題があって購入を妨げているといった可能性があるので、それらを改善すべきです。

ファネルの概念を取り入れるということは、消費者が購買行動のどのプロセスにいるのかきちんと区分するということ。それによって必要な施策は整理され、より的確にアプローチできるようになります。

近年では問題点も…

そうした一方、近年ではマーケティングファネルの問題点も多々指摘されるようになりました。

マルチデバイスの利用が当たり前になり、ソーシャルメディアが普及したいま、車の購入を検討していた人がソーシャルメディアをきっかけに宿泊施設やレジャーの情報に興味を持ったり、口コミサイトで飲食店を探していたネットユーザーがお取り寄せグルメを購入したりするケースは珍しくありません。

大量の情報をスピーディーかつ場所を選ばずに手に入れられるようになったことで、逆三角形型のマーケティングファネルでは説明できない、そこからはみ出す購買スタイルが広がっているというわけです。実際、2015年にはGoogleのマーケティングエバンジェリストがあるカンファレンスのなかで「マーケティングファネルは死んだ」と発言し、話題になりました。

そうしたなかで再注目を集めているのが今回のもう1つのテーマ、トリップワイヤーです。

トリップワイヤーとは?

トリップワイヤーとはもともと地面に仕掛けられたロープやワイヤー、あるいは大規模作戦の前に展開する斥候部隊などを指す軍事用語。日本語で意訳すれば「伏線」と言い換えられるかもしれません。

マーケティングの世界では、顧客を獲得するための最初のステップとして販売する低額商品を「トリップワイヤー」。トリップワイヤーをきっかけに購買者の興味関心を高め、利益率の高い商品の購買へシフトさせることで、アップセル(顧客単価向上)を図るアプローチを「トリップワイヤーファネル」と呼びます。

いわゆる2ステップマーケティングと似ていますが、無料サンプルや試供品によって購買意欲を引き出す2ステップマーケティングに対し、トリップワイヤーとして提供されるのはあくまで有料の商材。消費者が支払った額以上の価値を提供することで、その後のアップセル、継続的なコンバージョンを促進するという点に違いがあります。

トリップワイヤーファネルの効果

前述のとおり、マルチデバイスやソーシャルメディアの普及を背景に、消費者の購買スタイルは多様化してきました。広告費をかけて商品をPRしても、ソーシャルメディアの投稿などをきっかけに他の商品(あるいは体験など)に興味が移り、結果的に購買を逃すといったケースも増えています。

トリップワイヤーファネルが優れているのは、そうなる前にコンバージョンを獲得できる点。あふれる情報を目のあたりにして消費者の興味・関心が移り変わる前に、低価格かつ手頃に購入できる商品を提示することで、将来的な優良顧客候補として囲い込むことが可能です。

また、有料ゆえに生じる消費者意識もトリップワイヤーファネルの特徴の1つ。無料サンプルや試供品は文字通りタダなので、配布しても使ってもらえるとは限りません。実際、街中で手に入れた試供品を机の引き出しにしまい込んだまま、キッチンやバスルームに放置したままという方は多いのではないでしょうか。

一方でトリップワイヤーは有償なので、消費者は必ず対価を得ようとします。そこで価格以上の付加価値を提供できれば、ソーシャルメディアの口コミなどで評判が広まる可能性も高まります。

あわせて、有償である以上、買う側には「どうせお金を払うなら…」という意識も。そこで売る側としての本命商品、利益率の高い商品を提示することで、「どうせお金を払うなら、ワンランク上のものにしよう」、「どうせお金を払うのだから、この際まとめ買いしておこう」と、いち早くアップセルにつなげられるというわけです。

トリップワイヤーを活用するうえでの注意点・ポイント

購買スタイルが多様化している時代にいち早くコンバージョンを得られるトリップワイヤーファネル。最後に実践するにあたっての注意点をご紹介して締めくくりたいと思います。

・限定感を醸し出す

消費者の興味が移り変わる前に、他の商品・サービスに目が行く前にトリップワイヤーを購入してもらうためには、限定感を醸し出すのが大事。「初回購入の方限定」、「〇月〇日〇〇時まで限定」といった条件をつけて、いち早くコンバージョンへつなげましょう。

実際、トリップワイヤーを活用している通販会社・オンラインショップの多くがこうした売り文句を使って売上を伸ばしています。

・商材タイプに注意

トリップワイヤーファネルはその性質上、トリップワイヤー単体で消費者のニーズを満たしてしまう商材、それ以上の購買意欲をかき立てられない商材には向いていません。一般的に不向きとされるのは、家電をはじめとする耐久消費財、時計・アクセサリーといった嗜好性の高い商材など。

そうした一方、単価が安く継続的な購買が見込める商材、たとえばスイーツ、飲料、健康食品、洗剤などの日用品の販売には非常に大きな効果を発揮します。

執筆者:AutoPilotAcademy編集部

執筆者:AutoPilotAcademy編集部

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監修者:小池英樹

監修者:小池英樹

AutoPilotAcademy[オートパイロットアカデミー] CEO 小池英樹 新潟市のマーケター(36歳)。新潟県新潟市生まれ、新潟市育ち、上智大学卒。 2011年にRutuboを設立、カネなし、コネなし、ノウハウなしの状況から独立。ヨドバシカメラで購入したホームページ作成ツール「Bind」を手元に事業開始。 顧客ゼロ・無収入の状態から販売促進を学び、中小企業300社以上のオンライン集客支援に携わる。顧客は日本全国及びに海外で活躍する日系企業に及ぶ。 顧客企業の集客支援も手掛ける傍ら、AutoPilotAcademyでは、培ってきた集客のノウハウを伝えている。 顧客獲得に苦心するスモールビジネスオーナーのためのオンライン集客のバイブルを作ることを目標としている。

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